タイで有名なオバケの話 ピー・ガハン(ผีกระหัง)
ピー・ガハン(ผีกระหัง)は、タイの民間伝承や怪談に古くから登場する男性の怪異です。ピー・ガスーと対をなす存在として知られており、夜になると特殊な農具を使って空を飛ぶという、極めて奇妙な特徴を持っています。
■ 容姿と生態
ピー・ガハン最大の特徴は、農具を翼や尾の代わりに用いて飛行する点にあります。両腕には、米をふるう際に使う丸い竹製の平籠(クラドゥン/กระด้ง)を羽のように装着し、股の間には木製の大きなすりこぎ棒(サーク/สาก)を挟み、尾のようにしてバランスを取りながら空を飛ぶとされています。
基本的には上半身裸の男性の姿をしており、夜になると暗闇に紛れて浮遊します。主に口にするものは、ピー・ガスーと同様に、生肉や生魚、動物の死骸、さらには汚物などの不浄なものです。
そのため、一部の伝承では、夜な夜なピー・ガスーと共に農村を徘徊し、汚物を貪り食う「怪談界のカップル」として描かれることもあります。
■ 目撃地域と特徴
ピー・ガハンの目撃談も、主に地方の農村地帯や電灯の少ない地域に集中しています。特に新月の夜には、田んぼのあぜ道の上空を低空飛行したり、森の木々の上をかすめるように移動したりする姿が目撃されてきました。
臆病で、人前に現れるとすぐ逃げ出すことが多いピー・ガスーに比べ、ピー・ガハンはやや獰猛な性質を持つとされています。そのため、昔から夜の農村や民家の床下、裏手などで鉢合わせた人間に襲いかかり、危害を加えることもあると恐れられてきました。
■ 起源と呪いの伝承
ピー・ガハンも死者の霊ではなく、生きた男性が呪いによって変貌した存在だと考えられています。
特に、強靭な肉体や不死身の力を得るため、禁忌とされる黒魔術や呪術に手を染め、その禁忌を破った報いとして呪いが自らに返り、怪物化したと言われています。
また、その呪いの継承方法もピー・ガスーと共通しています。寿命が尽きかけたピー・ガハンは、自らの唾液を親族や身内の者の口に入り込ませることで、その呪いと性質を他者へ受け継がせるとされています。
■ 関連作品(映画・ポップカルチャー)
ピー・ガハンは、タイのホラー映画やテレビドラマにおいて、ピー・ガスーとセットで登場する定番の怪異として知られています。恐怖の対象としてだけでなく、その独特な飛行姿から、ホラーコメディ作品ではコミカルな存在として描かれることも少なくありません。
しかし、単独主人公として数多くのヒット作品を生み出してきたピー・ガスーとは異なり、ピー・ガハン単体を主人公に据えた大ヒット作品や、社会現象級の知名度を獲得した作品は、現在のところほとんど存在していません。





















