タイの有名心霊スポット アユタヤ県の「バーン・クンピタック」(บ้านขุนพิทักษ์)
アユタヤ県の「バーン・クンピタック(บ้านขุนพิทักษ์)」
世界遺産の街として知られるアユタヤ県には、どこか古典的な趣を漂わせる美しくも恐ろしい心霊スポットがあります。それが、ノイ川のほとりに佇む築100年以上の古民家「バーン・クンピタック(บ้านขุนพิทักษ์)」です。通称「バーン・キアオ(บ้านเขียว)」、日本語では「緑の家」とも呼ばれる木造の洋館です。
この場所は、凄惨な事件を背景にした心霊スポットとは少し異なります。かつての家主が抱いていたとされる家や財産への強い執着、そして未練が今も残っていると語られる、タイの伝統的な怪談の雰囲気を色濃く残した場所です。
■ 背景にある人間の執着と悲劇
この美しい2階建ての洋館は、ラーマ6世の時代に、地元の有力者であり税務官でもあったクンピタック・ボリハーン氏によって建てられたといわれています。当時、建物は淡い緑色に塗られており、周囲の自然と調和した非常に美しい邸宅だったとされています。
しかし、家主であるクンピタック氏がバンコクへ出向いた際、急病により現地で亡くなったと伝えられています。主を失った家は次第に管理されなくなり、長い年月の中で静かに放置され、木々に覆われた不気味な「緑の廃屋」へと姿を変えていきました。
■ 目撃される怪異
廃墟となってから、この場所はタイの若者たちの間で有名な肝試しスポットとして語られるようになりました。ここで報告される怪異は非常に具体的です。
夜間に敷地内へ足を踏み入れると、誰もいないはずの古い床板から、ギシギシと重い足音が聞こえてくるといわれています。また、風もないのに窓や扉が突然バタンと音を立てて開閉するという話もあります。
さらに、白い服を着た老人の影が家の中を巡回している姿や、2階の窓から冷たい視線でこちらを見下ろしている姿が目撃されたとも語られています。この老人の霊は、かつての家主であるクンピタック氏ではないかと噂されています。
特に恐れられているのは、この家で不敬な態度を取ったり、敷地内の物を勝手に持ち帰ったりした者にまつわる怪談です。そうした人の夢の中に家主の霊が現れ、持ち帰った物を返すよう強く迫るといわれています。その恐怖に耐えきれず、翌日に慌てて返しに来た人もいると語られています。
■ 関連するとされるタイの幽霊
この場所にまつわる霊の噂は、タイの民間信仰とも深く結びついています。
家や土地、財産への強い執着からその場を離れられず、今も宝や屋敷を守り続ける霊は、タイでは「ピー・プーソーム・ファオサップ(ผีปู่โสมเฝ้าทรัพย์)」のような存在として語られることがあります。これは、財宝や大切な所有物を守る老人の霊のような存在で、不敬な侵入者や盗みを働く者に災いをもたらすと信じられています。
また、この家に宿る霊は「ピー・チャオティー(ผีเจ้าที่)」、つまり土地や屋敷を守る霊の性質を持つとも考えられています。そのため、単に人を脅かす悪霊というよりも、自分の家と財産を守り続ける守護霊のような存在として恐れられているのです。
一方で、長い間放置された廃屋という性質から、周囲にはさまざまな浮遊霊が集まっているという噂もあります。夜の暗闇の中で聞こえる足音や物音は、家主の霊だけでなく、そうした霊たちによるものではないかとも語られています。
■ 現在の状況
現在、バーン・クンピタックは地元の自治体や文化財関係者によって一定の管理がなされており、歴史的建築物としての価値も見直されています。昼間に見ると、古い木造建築としての美しさや、アユタヤの歴史を感じさせる趣があります。
しかし、夜になると周囲は静けさに包まれ、川の流れや木々のざわめきが、かえって不気味な雰囲気を強めるといわれています。家主の霊が今も静かに屋敷を守り続けていると信じられているため、地元の人々の中には、夜間に近づくことを避ける人も少なくないとされています。
バーン・クンピタックは、単なる廃墟ではなく、家や土地への執着、そしてタイの伝統的な霊信仰が重なり合った、アユタヤを代表するいわくつきの場所の一つとして語り継がれています。





















